「あるべき場所にかえるため」
「Reversus」MusicClip,8’25”,05.10.2011
Story
音に煌めく珊瑚礁に迫り来る影。海に棲む異形の少女の”予感”から、物語が始まる。
表題:Reversus リヴェルサスはラテン語で逆転・帰還の意。
(朝凪の濁りに、大きな災いの訪れが視える)
(私の縋るような”大切”のため 海の平穏を奪う者に 歌を届けよう)
(心を魅き寄せる愛おしい海、芒の様に揺れ瞬く珊瑚礁)
(失くしたくない だから、また鍵をかける)
「唄影に隠れていて。必ず護るから――」
珊瑚へ危機を報せる歌声が雲間を貫き、彼方へ渡る・・・
警哭が響く空。あの鷲にも 近づく”それ”が見えるのだろうか
曇る空、風に散る声は掠れたノイズへと変わる。
そう、この海を守る少女はヒトではないのだ。
荘厳なる船から違国の歌声が響く。船首には天使の彫像。
“美しき珊瑚よ、深く狭小な海で輝くのは惜しい
素晴らしき君達を広く知らせよう”
“暗きに置けば、ひとつひとつの輝きに別けて愛される
私達と行こう この海がさらに素晴らしいものになる さあ”
少女は彼らに歌を叫ぶ
“そうはさせない。饒舌に並べられる感動など 真実ではない”
「何を怯えている?」少女と船人の言葉は通じない。
すれ違いは苛立ちとなり、やがて嵐へと変わる
少女の決断ーー絆の言葉を引き換えにヒトの言葉を手にする。
それは彼らの”本音”までも視える薬だった
“全てを賭けた薬は、もたらす真実を伝えることで、自身を蝕む毒となる”
少女が知ったことを珊瑚に教えることはできなかった
珊瑚たちの望みを叶えると云い、外海の甘美を説く人間達
外海からの手招き。
それとも誘声に靡く珊瑚だろうか
“淦映えの山は誰のせい?” 邪魔者として少女は捕われる
そして・・・
彼女は初めて人の言葉で歌を紡いだ。
それを合図とするように、全ては深海に引きずり込まれていく
最後に彼女が歌った音色は、波音に消え、聴こえることはなかった
消えゆく珊瑚
僅かに残った珊瑚には、その歌が言葉が、届いていた
かつての海はもう、無い。けれど
その言葉を得る者達がまた新しい海をつくるのだろう
沈みゆく船―そして誰かの、骨
逆転の大渦の中で、沈む者、浮かぶ者
あるべき場所にもどるため 次の時代が始まる
形を失い、元の姿に戻る声
彼女はどこにもいない、けれど その歌だけは未来に残ったという
Producer,ExectiveDirector: Shizuka Kitajima
Composed by Treow Lyrics by NaturaLe
Performed by The Reversus Orchestra(Brass,Strings,Chorus),Amp-an(Timpani)
Vocal(as Sirene): Luschka
Conductor(Chorus): R.
Recording&Mixing&Marstering engineer: Tarsan
Visuals by Studio ELECTROCUTICA (project”я”)
MV Director: Kawauso
Drawing: Isaku Ito & Shizuka Kitajima
Font Design: Wataru Osakabe (http://www.lovedesign.tv/ )
Special thanks to all audiences,our friends and families.
この作品について
ELECTROCUTICAの第一作目としてスタートした「Reversus(リヴェルサス)」。
2010年2月より制作を開始し、4月に管弦楽・合唱・独唱・ティンパニを都内スタジオにて録音。7/19発表のアルバム「REVERSUS」の表題曲として収録した楽曲です。
同時に進行していた映像が今年5月10日をもって完成となり、ようやく作品として公開のはこびとなりました。多くの皆様のご協力と応援のもと、本作を実現させることができましたこと、心より感謝申し上げます。
新たなテクノロジーによって生まれた音楽シーンの潮流と、旧くからある偉大な音楽シーンの潮流。わたしたちが普段から深く関わっている、ネット発の音楽シーンは、いま大きな転換期を迎え、そうした2つの相反する波が合流し、渦を巻いています。
人がたくさん集まるところには、チャンスが沢山あり、成功を願う人たちがやって来ます。それは幸せな形で実現することもあれば、時に、皆が大切にしていたものが「ねじ曲げ」られ、願わない形でただ「儲けるためのネタ」として扱われてしまうことも多々あります。
そして使い捨てられた場所は、誰もいない荒れ地になってしまうことも・・・。
皆がいま”大切”にしている物も、愛した場所も、いつかそのような結末を迎えるのでしょうか。
私たちはこれから、どこへ向かうべきなのか。何を信じるべきなのか—潮流が逆向きになり、かつての「成功」が成功ではなくなりつつある今、どこかに流されて進む道を視誤らないように・・・我々の決意でもあるこの作品は、多くの期待と憂いを伴う初産となりました。